針は、いつごろこの世に生まれたのでしょうか。ヨーロッパでは、ドイツのシュワイツェルビルドで発掘された石器時代の遺物の中に、馬やトナカイ、あるいは兎の骨で作られた穴あき、穴なしの縫針があったと伝えられています。
日本でも同様に、古代から針はあったことでしょうが、今から1500年前、養蚕が伝わって絹ができたころには、すでに立派な針が作られていたようです。
普段の生活の中では忘れられがちな、小さな針ですが、水や塩が人の体を内側から支えてきたように、針は、人の体の外側の部分と大きく関わってきたのです。人が革や編んだ植物で、身をまとうことを覚えた時、針が必要となったと考えられます。
針はあくまでも道具ですから、いつも目につくものではありません。しかし、私たちの回りには、針によって作られたものが、数多くあります。


私たちの周りの針で作られた物

★私たちの服を縫うのが、縫針です。日本人の着物も、世界各国の民族衣装も、針がなければ形になりません。もちろんパリのオートクチュールも、私たちの普段着も。また毛糸のセーター、カーディガンも、編針によって作られます。

★オランダの木靴は別として、日本の下駄は鼻緒の部分に針の働きが必要です。そして革靴は、もちろん革の縫製用針で作られます。革縫針は、針先が鋭い三角状になっており、厚い革でも三方から切りながら針先を通します。別名、"三角針"とも呼ばれています。

★メカニックの最先端をいく自動車にも、針がちゃんと力を貸しているなんて、ちょっと信じられないようですが、車のシートは、やはり針で縫い合わされているのです。

★じゅうたん、カーペットも、カーペット針で縫製されています。"衣"のみならず、人間の"住"の分野にも、針は大きく関係しています。日本のカーペット"畳"も、やはり畳針が必要です。畳針は、厚い畳の床を突刺して縫うので、特別長く太く、針の中央部がやや太めになっているのが特徴です。

★日ごろ何気なくすわっているイスやソファーの曲折部分にも、縫目があるのをご存じでしょう。これは、カーブ針が用いられます。この針の形態は、ほんとに需要と供給の関係を思い起こさせるものですね。またカーブ針は、ハンドバッグやガマロの口金の取付けなど、手芸にも広く用いられます。

★ビジネスの分野では、マップピンが活躍しています。本・支店あるいは取引先の場所を地図の上に示したり、営業成績グラフを作成したり。また選挙の票読みや交通事故の件数表示にも使われています。
★近ごろ流行のファブリック・アート。布と糸で自由自在に芸術の世界を広げていくこの手法に、縫針は欠かせません。針がなければただの糸と布。
また世界各国に昔からある糸のアートが、刺しゅうです。フランス刺しゅう針が一般によく使われていますが、すくい刺しゅう用のスウェーデン刺しゅう針はクロスステッチに使うと簡単です。また日本刺しゅうは、同じ一つの作品でも、刺しゅうする箇所によって糸が違い、一つの作品に5〜6種の針が必要です。
★部屋の中にポスターを飾ったり、カレンダーを留めたり、文房具としてなじみの深い押しピンも、実は針の一種なのです。最近は、カラフルで、動物型、ミルク型、傘型等、デザインも豊富にあるので、インテリアを飾る楽しさも倍増。 ★美しい花束に、そっとメッセージカードをそえてプレゼント……このカードと花束をくっつける役割が、フローリストピン。パールの頭をしたかわいいこのピンも、やはり針です。




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